ご挨拶 実行委員長 田中伸彦(東海大学)

第48回日本レジャー・レクリエーション学会全国大会を東海大学代々木キャンパスで開催できますことに、心より御礼申し上げます。

東海大学代々木キャンパスは、渋谷区富ヶ谷にある小さなキャンパスです。一般的には、東海大学というと多くの学生が学ぶマンモス大学を想像されると思います。実際本学には、北は北海道から南は九州まで、8つのキャンパスがあり、あわせて約30,000人の学生が在籍しています。教員数も1,600人を越える大所帯です。
その中で、代々木キャンパスは、一学年の定員が200人の観光学部や大学の本部機能などで構成されるとても小さなキャンパスです。キャンパスは小さいですが、普段は全国のキャンパスに分散している東海大学所属の本学会会員の力を集結させて皆様を歓迎したいと思っております。

第48回大会のテーマは『レジャー・レクリエーションのデスティネーション(目的地)づくり』と題し、我が国のレジャー・レクリエーションの場所づくりに焦点を当てて、議論できる場にしたいと考えています。
スポーツでも、福祉でも、観光でも、芸術活動でも、自然散策でも、レジャー・レクリエーションを楽しむ場合には、その活動を行う「場」が必要になります。観光学では、ある活動を行うために目的を持って訪れる場所のことを「デスティネーション」と呼びます。近年、日本ではそのデスティネーション(目的地)づくりに関する課題が山積し、関心が非常に高まってきました。
例えば、数年前に国立競技場の建て替え問題が世間を賑わしたことは、本学会の会員であれば多くの方が覚えていることと思います。言うまでもなく、国立競技場は2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催をきっかけに建て替えることとなりました。
ところで、この国立競技場には、どの様な人たちがレジャー・レクリエーションのために訪れるのでしょうか?
もちろん、スポーツを楽しむアスリートたちが集うことは論を待ちません。しかし、この場で2020年以降も陸上の国際大会が滞りなく開けるでしょうか? また、「見る」スポーツとして観客の存在も忘れてはいけませんが、その対応は十分でしょうか? さらに「学ぶ」スポーツという面からは、以前は国立競技場内に併設されていたオリンピックミュージアムをどこに移転させるのでしょうか? 最後に、当初案では音楽イベント会場として頻繁に活用する計画がありましたが、音楽愛好家への配慮どうなったのでしょうか? 要するに、国立競技場に集まる様々な人々が満足して活動できる場づくりができるのでしょうか?
国立競技場の課題は、日本におけるデスティネーション(目的地)づくりの、ほんの一例です。しかし、この事例を考えただけでもレジャー・レクリエーション分野の研究者が、今の時代においては、個々の活動に集中するだけではなく、デスティネーション(目的地)づくりまでを頭の片隅に置いておくべきであることをお察しいただけるのではないでしょうか。

その様な背景を踏まえて、大会初日の「地域研究」では、国立競技場が隣接する明治神宮内苑・外苑を(*注1)、様々な学問分野にまたがる学会員の方々と一緒に周りたいと考えています。実は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年は、明治神宮鎮座100年にあたります。大正時代に“明治時代のレガシー”として創られた明治神宮、日本人の各種スポーツの聖地として認識されている明治神宮について、成り立ちや現状を巡検してきたいと思っております。
ところで、今となっては立派な森に囲まれている明治神宮ですが、今から100年前にはこの様な場所は存在しませんでした。信仰の場(*注2)や、近代日本を象徴する場として、明治神宮内苑/外苑は、100年前の先人が計画してゼロから創りあげたのです。その点を、現地を見ながら噛みしめたいと思います。
そして、大会2日目の基調講演では、日本の観光地づくりに詳しい専門家からお話を伺う予定です。そして、シンポジウムでは、上述の明治神宮や、オリンピック、里山など、日本のデスティネーション(目的地)づくりにおいて話題になっているトピックを軸に専門家を招聘し、議論する予定です。
最終日(3日目)には、例年どおり、一般公募の口頭発表、ポスター発表、ワークショップを募ります。活発な議論が展開されることを楽しみにしております。

皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

*注1:元々国立競技場の前身の競技場は、明治神宮の一部として建設され、後に所管が変わりました。
*注2:レジャー論を修めている学会員であれば、「信仰」という行為がレジャーの本質に大きく関わっていることをご存じのことと思います。